グラフィックデザイナーはその人ならではの感性が社会から評価されているからこの職業が成り立っているのかもしれませんが、決してセンスだけでデザイナーになれるわけではありません。センスも影響するかもしれませんが、それ以上にデザインには“要素と原則”が存在しており、これを意識することでデザインの能力は大きく成長するはずです。要素と原則を学ぶ必要があるからこそ、デザインを専門とする教育期間が存在し、デザインスキルを高める重要な要素のひとつといえます。以下では、デザインの要素と原則について簡単に触れてみたいと思います。
デザインの要素を具体的に挙げるならば、スペース、線、バランス、色、カタチ、テクスチャ、フォーム、明度などがあります。スペースとは空白のことであり、うまく使うことでスッキリとした印象を見る人に与えます。線は、水平線・垂直線・カーブ・斜線・ジグザグ・点線・破線などがあり、組み合わせるだけでデザインの幅が広がります。色は言うまでもなく、イメージを視覚的に訴えかける上でとても大切な役割を果たしており、明度も色を伝えるのに大きな影響を及ぼします。カタチとテクスチャは、オブジェクトの印象を決定づけるものであり、それはフォームを意識してデザインされるものでもあります。
上記のようなデザインの要素同士に関連性を持たせ、デザイン全体を構成していくのが、デザインの原則です。原則といっても明確なルールがあるモノではないので、目的に合わせて原則を取り入れていくこととなります。よく知られたものでは統一性が挙げられるでしょう。すべての要素が同じコンセプトに属することで一つのデザインを作り上げていきます。また、斬新性を持たせるのであれば、多様性を意識します。これら両者において共通するのが調和です。色の調和は同系色や類似色を使用、デザインにおける調和は、形、テクスチャ、パターン、テーマ、スタイル、サイズ、または機能性を調整していきます。加えて、強調やコントラストは見る人の視線をどこへ誘導していくかについて大きく関係してきますし、オブジェクト間のサイズをコントロールする割合も軽視できません。
これまでご紹介したように、デザインと一言で表現しても、いくつもの要素が複雑に絡み合っているため、本物のデザインとするのは決して簡単なことではありません。プロのデザインを参考としながら、どの要素をどのように使用しているのか、観察するとよりノウハウが把握できると思います。